· 

【試合結果】2011 武林風 第5回 世界拳王争覇戦

1月15日、中国は河南省にて『武林風』が開催された。

毎年恒例となっている武林風中国選抜ファイター vs FEG世界選抜ファイターの対抗戦「武林風・世界拳王争覇戦」も5回目を迎え、大きな盛り上がりを見せた。
 会場となった河南省鶴壁市の鶴之舞体育館は、王洪祥や一龍など武林風のトップスターが世界のファイターと試合をするとあって通常5,000人のキャパシティに6,000人の観客がつめかけるという大盛況。武林風の人気の高さを見せつけた。
 格闘技界に新たな勢力図を描きつつある中国勢の活躍と、FEGの協力のもとイ・スファン、吉川英明ら、K-1参戦経験のあるファイター達も出場した。


▼第一試合:65kg K-1特別ルール(武林風ルール)

○林帥(リン・シュワイ/中国)

 

 

 

<結果:判定3-0>

×細野岳範

(日本/チーム・ドラゴン)


 サウスポーに構える元J-NETライト級チャンピオン細野に、開始早々強烈な左のサイドキックを蹴る林。クロスレンジでの打ち合いに持ち込みたい細野だが、遠い間合いから一気に入って来るサイドキックや右ストレートに手を焼く。
 1ラウンド中盤、サイドキックのフェイントから豪快な右ストレートに、細野ダウン気味のスリップ。しか し細野も終盤に強引に打ち合いを仕掛ける。続く2、3ラウンドも同じような展開が続くが、最後までこの強烈なサイドキックを攻略出来ず、細野は3-0の判 定負けを喫した。試合前半からロングレンジの攻撃に徹した林、単調ではあるが、打たれ強さと併せて、まだ二十歳なだけに将来は有望だ。


▼第二試合:70kg K-1特別ルール(武林風ルール)

×楊◯(ヤン・ジュオ/中国)

 

 

<判定3-0>

○イ・スファン

(韓国/KHANジム)


 早くもK-1韓流スター、イ・スファンの登場にどよめく会場。対するは中国選抜の楊。1ラウンド、左のローで様子見のイに対して、楊は強引に中に入ろうとする。2ラウンド、徐々にペースを上げるイ、中に入ろうとする楊にカウンターの膝が入り出す。
 最終ラウンド、後の無い楊は相変わらず強引なインステップを試みるが、ことごとくイの左ミドルや膝蹴りで止められてしまう。しかしイの決定打となるべきパンチも精度を欠き、結果はイ・スファンの判定勝ち(3-0)となった。


▼第三試合:女子56kg K-1特別ルール(武林風ルール)

○王萌(ワン・モン/中国)

 

 

<判定3-0>

×イ・ヒョンジェ

(韓国/金海ジム)


 勢いのある中国選抜、この女子選手も例外ではなかった。開始早々鋭いワンツーからパンチの連打を繰り出す王。
防戦一方となるイはたまらずダウン。しかしKO負けだけは免れようと、イは根性で立ち続ける。
王が打ち疲れたところに反撃を試みるイだが、最終ラウンドまでこの展開は変わらず。判定3-0で王に凱歌が上がった。


▼第四試合:85kg K-1特別ルール(武林風ルール)

○郭強(グォ・チャン/中国)

 

 

<KO 1R1分48秒>

×デブ・クマル・ギミレ

(ネパール/志村道場)


 中国の郭は武林風85kg級チャンピオン。対するネパールのデブは、フルコンタクト空手とMMAのキャリアを持つベテランだ。開始のゴングと共に襲いかかる郭をリングを大きく使ってかわす作戦。
しかし台風のような攻撃力の郭、パンチから強烈なローと手を休めない。
1ラウンド一分過ぎ、遂に中国の台風がネパールのデブを捉えた。パンチでダウンを奪われたデブ、ダメージは深いが果敢にレフェリーに再開を促す。しかし郭の勢いは止まらない。これ以上の続行は不可能とレフェリーは判断し、試合を止めた。(1R1分48秒、KO勝ち)


▼第五試合:80kg K-1特別ルール(武林風ルール)

○方便(ファン・ビェン/中国)

 

 

<KO 3R1分30秒>

×工藤勇樹

(日本/エスジム)


 当初、出場予定だったウクライナの選手が交通事故で欠場の為、なんと1日前に出場が決まった工藤。
最近ではTRIGGERのメガトンファイト(ヘビー級トーナメント)で元ランカーを破るなどの活躍を見せる新進気鋭のファイターだが、この短時間では調整不足は否めない。更に武林風では11戦負け無しの方が相手では荷が重いかと思われた。
しかし工藤はハートを見せる。ガードの低い所をつかれパンチでダウンを奪われるが、逆にこれで奮起したか一か八かの打ち合いを挑む工藤。打ち疲れた方を相手に3ラウンドまでもつれ込む接戦を演じるが、遂に力尽きるようにボディを効かされてダウン。
試合終了後には相手の方も抱き上げて賞賛するほどの好ファイトだった。(3R1分30秒、KO勝ち)


▼第六試合:72kg K-1特別ルール(武林風ルール)

○一龍

(イー・ロン/中国)

 

 

<判定 3-0>

×吉川英明

(日本/チームドラゴン)


 セミファイナルに登場したのは、武林風で王洪祥と人気を二分する一龍。ここ河南省が誇る嵩山少林 寺の少林拳をベースにした戦い方やコスチュームで人気を博すが、昨年12月の武林風徐州大会にて、K-1韓国大会に出場経験のあるオ・デュソクを一方的に 葬り去った実力者でもある。対する吉川もJ-NETウェルター級7位の実績を持つ。

 1ラウンド、体格に勝る一龍は単発だが強力な攻撃で吉川に襲いかかる。対する吉川は、テクニカルな細かい連打で対応。一進一退の攻防が続く中、試合が動いたのは3ラウンド。吉川の細かいパンチが効きだし一龍が下がり出す。
ここが勝利のポイントと判断した吉川、一龍をコーナーに押し込んでパンチをまとめる。地元ヒーローのピンチに会場は悲鳴にも似た叫びがこだました。
その時、一龍の出した右ストレートが吉川のアゴを捉えた。ストンと腰から崩れ落ちる吉川。僅かな時間に望 みをかけた吉川と、それを迎え撃つ一龍。意地とプライドが交錯した激しい打ち合いに地鳴りのような大歓声が上がった。ここで無情のゴング。僅かに追い上げ が足りずジャッジのスコアは3人とも29-28の大接戦で一龍の判定勝ちとなった。


▼第七試合:80kg K-1特別ルール(武林風ルール)

○王洪祥

(ワン・ホンシャン/中国)

 

 

<判定 3-0>

×アレクサンドル・ベルニャコフ

(エストニア/GARANT GYM)


 ムエタイスタイルのアレクサンドルに対して、豪快に左右の拳を振って前に出る王。アレキサンドルは前蹴りでその前進を止めようと試みるが、不安定な姿勢でバランスを崩したところに右のフックを強打されてダウンを喫する。
2ラウンド、ようやくアレキサンドルの左ミドルがヒットし始め、王の前進にようやくストップがかかった。
3ラウンド、後の無いアレキサンドルは前に出るが、王も大歓声に押されて負けてはいない。
観客も総立ち、大興奮の中、試合終了のゴングが鳴った。判定は3-0で王。
負けられないというプレッシャーの中で、一つのダウンを奪っての完璧な勝利は、正にスターの面目躍如と言ったところだろう。

 

 


 結果的に、今回も1勝6敗と苦戦を強いられたFEG世界選抜チーム。原因としては、毎週行われる武林風試合での経験値の向上や、元々散打のトップ チームという資質的に優れた選手であるという部分の他に、負けたら後が無いというハングリー精神によるところも大きいはずだ。着実にレベルアップしている 中国人ファイターたちに今後も注目したい。